photographers’ gallery press no. 8発売記念企画—
田本研造──函館港湾・水道工事の記録
2009年 5月8日(金)~6月7日(日)
協力/土木学会附属土木図書館
12:00~20:00 会期中無休
田本研造(1832−1912年、和歌山県生まれ)とは、北海道にあった当時の開拓使からの依頼で札幌や釧路、択捉島など全道各地を撮影し、当時の風景や習俗を伝える写真多数を残したほか、北海道へわたった土方歳三の撮影などもした写真家。
彼は、医学を志し、27歳の時に長崎より函館(当時の箱館)に渡るが、凍傷にかかり右足を失うこととなる。これを気に写真家の道へ進むこととなる。
そんな彼に、開拓史より撮影依頼がきたのが、1972年のこと。札幌をはじめその様子の撮影に取り組むこととなる。足を引きずりながらの撮影は相当困難であったことは想像に難くない。
一方、開拓史は1869-1882年まで北方開拓のためにおかれた庁舎である。その中で島義勇により、札幌に世界一の都市を築く事を目指しその建設が始まった。しかし、当時はただの原野に近かったため、基盤整備が相当の重労働であっただろう。田本の写真はそのような近代幕開けの日本の都市開発の一端を切り取った貴重な写真である。
北海道の開拓史は、自然条件との戦い、移民問題、樺太開拓とロシアとの関係、そしてアイヌ民族の強制移住と近代から現代の日本史に置いて重要な論点を引き出す事となる。
しかし、大局だけではなく、慣れ親しんだ環境での生活を強く支持しアイヌ移住政策に反対した松本十郎や「健土健民」、「神を愛し、人を愛し、土を愛す」という三愛主義を強く訴え北海道の知に酪農を根付かせた黒澤鳥蔵など知られざる近代がある事も忘れてはならない。
北海道では開拓史や五稜郭を始め、様々な場面で北極星をあしらったマークや徽章を目にする。暗く寒い原野で不動の北極星を眺め続けた人々の事を思いながら、是非とも足を運びたい写真展である。